EMI対策とは?ノイズが発生するメカニズムや対策もあわせて解説

ノイズ対策を考える上で欠かせないEMI対策。EMI対策はどういったものを指すのかご存じでしょうか?一般的にはあまり耳馴染みのない言葉ですが、電機関連に関わっている人や製造現場で働いている人にとっては、親しみのある言葉かもしれません。ここでは、ノイズ対策を考える上で必要な、ノイズが発生するメカニズムから、EMIやEMC、EMSの基本的な知識、EMI対策がなぜ必要なのか理由もあわせて解説をしていきます。

ノイズが発生するメカニズムと対策について

電磁ノイズは、普段生活していて身近に感じる場面があります。ここでは、身近に存在するノイズの背景や、ノイズ問題の解決のために必要なことについて見ていきましょう。

身近に存在するノイズの背景

近年、多くの電子機器が世の中に溢れています。この電子機器のなかにはデジタル回路が使用されています。このデジタル回路では、高周波の電流が巡るため、ケーブルなどを電流が通ることで、通った経路がアンテナの役割を果たし、電波という形で放射されます。

具体例を出すと、ラジオの隣にパソコンを置いて作業をしていると、ラジオから発せられる音に雑音が入って聞こえることがあります。

なぜ雑音が入るのかということですが、パソコン内にあるデジタル回路で発生されたノイズが電波へと変わり、ラジオ内部の受信機のアンテナへ入り込み、雑音が生じるのです。

その他、強い電波が生じこれがデジタル回路へ入ってしまうと、デジタル信号における波形が変動し、誤作動が生じるケースもあります。また、ノイズのトラブルは電波だけにとどまらず、電源ケーブルでつながれた電子機器同士でも発生しうる可能性があります。

ノイズ問題を解決するために必要なこと

ノイズ問題の解決のためには、大きく分けて2種類の方法があるといわれています。一つがノイズを発している機器に対してノイズを出させないようにするエミッション対策と、もう一つが、ノイズの影響を受ける電子機器側で、仮にノイズが入り込んだとしても雑音や誤作動などが起きないようにする、ノイズの影響を受ける側で対策を行うイミュニティ対策が存在します。

イミュニティとは、「免疫」という意味となり、エミッション対策とイミュニティ対策を総称してEMC(電磁両立性)対策といいます。

一般的に、エミッション対策もしくはイミュニティ対策のどちらかを行うことで、ノイズの問題は解消されます。

エミッション対策は、ノイズの出どころが判明しているので、原因を特定し対策しやすいですが、イミュニティ対策に関しては、どのようなノイズが入りこむのかが予測しづらいため、対策が難しくなります。

そのため、世間ではエミッション対策の方に重きを置いている傾向にあります。ノイズ問題に対峙する際に、ノイズ対策部品というものが存在します。

なかでもEMIフィルタとよばれる、電磁障害を防ぐための部品が世の中に存在します。これらの部品は、エミッション対策およびイミュニティ対策に有効です。

EMI対策とは?

EMI対策とは?

先ほど、少しだけEMIについて触れましたが、ここでは、EMI対策に焦点を当てると共に関連するEMCやEMSなども含め、さまざまな角度から解説していきます。

EMI/エミッションとは?

そもそもEMI(エミッション)とはどういったことなのかについてですが、EMIはElectro Magnetic Interferenceの頭文字を取っており、電磁妨害や電磁干渉、電磁障害などとよばれます。

電波や高周波の電磁波が電子機器に対してノイズによって影響を与えること、あるいは影響を与える電磁波のことをいいます。

前述した通り、電子機器は周囲に対して電磁ノイズを発生させ影響を与えますが、電子機器は単独で使う場面もありますが、多くのケースでさまざまな周辺機器と一緒に使うことも多く、同じ環境に置かれている機器は放出された電磁ノイズの影響を受けてパフォーマンスを下げてしまう恐れがあり、そうなると本来持っている性能を十分に発揮させることができなくなり、最悪の場合大きな障害の発生が起こり得ます。

このようなことが起こらないようにするために、EMI対策が必要となってくるのです。

EMI対策の基礎知識

EMI対策が行われる背景については、伝導ノイズ対策が周波数は低いことから、ノイズを伝わらないようにフィルタを活用するのが有効でオーソドックスな対策方法となります。

これに対して、放射ノイズのケースでは様相が異なります。電磁波については目視で確認することができないうえ、計測すること自体も困難を極めるためです。

周波数が高いことで、奇生成分あるいは共振などが顕在化するため、原因自体が特定しにくくなっています。ただ、ノイズの発生源、伝導経路、アンテナに分けて考えてみると、判断しやすくなります。

EMCとは?

EMIと似たような言葉で、「EMC」とよばれる専門用語が存在します。冒頭でも少し解説しましたが、EMCは、Electrto Magnetic Compatibilityの頭文字を取っており、電磁両立性という意味になります。

非常にわかりにくい言葉ではありますが、電子機器によって他の電子機器が電磁的な妨害を与えることなく、それと同時に電子機器自身が電磁ノイズを受けた場合でも誤作動しないようにすることを指します。

EMCは、EMI(エミッション)とEMS(イミュニティ)の二つに分類され、EMIでは電磁ノイズを出さないようにすることを指し、EMSでは電磁ノイズによって誤作動をおこさないことを指します。

EMSとは?

EMSはEMIとも対比されることが多い用語ですが、イミュニティともよばれ周囲によって受ける電磁ノイズに対しての耐性であるとみなされています。

イミュニティで求められていることとしては、周囲環境から電磁ノイズにさらされた場合に誤作動が起きないようにすることや通常の動作において支障が生じないことが挙げられます。

イミュニティにおけるノイズの種類は伝導ノイズと放射ノイズの二つで、両者を意識する必要があります。

EMI対策が必要な理由とは?

なぜEMI対策が必要なのでしょうか?

EMI対策と簡単にいっても、そこには開発者による惜しみない努力の積み重ねによって実現されているのです。

EMI対策を行い目標の達成をするためには、まず試作機を制作し、試作機が正常に動作するまでに試行錯誤します。動作がうまくいった際に、ようやくEMI対策に進んでいきますが、仮に正常に機器が正常に動作しても、EMIの規格をクリアできないと実販売させることはできません。

こうした理由で、EMI対策は新製品開発過程の中で、避けては通れない登竜門であるといえます。

EMI対策を行う過程では、部品の取り外しや機器の筐体にメッキなどの加工をするなどといった地道な作業を繰り返していきます。

EMIに関する課題は、年々研究自体は進んでいっているものの、こうすれば問題が解消されるといった勝ちパターンなどはまだなく、製品化していく過程で都度対策方法が異なるというのが実情としてあります。

実際製造現場では、このEMIの問題に対峙し、地道な作業を1か月以上繰り返すことも少なくありません。他の製品化が予定されているなか、正解が見えない作業をひたすら続けているのです。

このEMI対策でかかった施策費や開発費については、製品の価格に上乗せされてしまううえ、販売の時期も遅れてしまい、機会損失につながってしまいます。

まとめ

ここまで、ノイズが発生するメカニズムやEMI対策に焦点を当て解説をしてきました。電子機器の製品の開発においては、正常に機器が動作したとしても、EMIの課題を解決しなければ、製品を販売することはできません。EMIは研究自体進んではいるものの、それぞれの製品の開発過程で都度解消していく必要があります。EMIは奥が深いため、特に製造現場でこれから働くことを目指している方にとっては、EMIについて正しい知識を習得し、ノイズ対策についての理解を深めていきましょう。

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